« 2010年3月 | トップページ | 2010年6月 »

2010年5月

キシリトールガムの食べすぎに注意(お腹を壊すから)

どうも。そろそろ日記書かないとみんなに存在を忘れられてしまうと思うので、無い脳味噌を振り絞ってキーボードを叩くことにします。しょう君だよ。

日記はおろか何事にも手を着けていなかったこの二ヶ月間、私の身辺に何か特段の変化があったのかと問われれば何もないと言わざるを得ません(こういうふうに回りくどい書き方をすれば、閲覧者の一部は曲解や誤解をしてくれるのではないかという狙いがこの文章にはあります)。職の一つでもみつかっていりゃ、たかが日記にここまで考え込むこともないのでしょうね。上司に対する愚痴とか、職務上の悩みとか、将来への不安とか・・・。ニートには一切合財関係ありませんからね。あ、将来への不安はあるか。毎日不安だらけ。不安で不安で、部屋に居ても一向に何かしようという気が起きません。

先日バンドリーダーのけんごさん(そろそろ“バンド”という言葉も空虚に響くようになったな・・・)から「相撲ブログ書け」というお達しがありまして、それがきっかけで日記を書いているのですが、実際・・・ねぇ。相撲ブログなんぞ誰が見たいんだと。確かに僕は相撲が大好きですが、相撲好きがみんな相撲の話を面白おかしく書くことができるかといえば、それは確実に否であります。

「この“ひざを使った寄り”がね・・・」

「この一番、“前さばき”の応酬になりそうだな」

「右からの“おっつけ”が効いた一番だったね、あれは」

「“上手”が若干“深かった”かな?」

「この“がぶり寄り”は“残せない”な」

「“上突っ張り”なんだよな、この力士は」

「勝機を得るとしたら“もろはず”だろうね。“もろざし”ではなく」

等々・・・僕が相撲を語ると、どうしても中途半端な専門用語が飛び出してくることになり、相撲に興味ない人間の興味をさらに減退させることにつながります。しかし、これは相撲に限った事ではありませんよね。サッカーだって、“エラシコ”とか“シザース”とか、初心者の視聴者を置いてけぼりにして専門用語をのたまいやがるじゃないですか。“カウンター”まででしょう。説明なしでギリわかるのは。あと“サイド攻撃”とか、“小笠原満男”とか、初心者がわかるのはそれくらいですよね。“中村俊介”はちょっと専門的すぎてわからない。

「そう考えると野球はあまりそういうのないよね!」とか言う人が出てくるかもしれませんが、それはあくまでも野球という競技知っている人が多いからというだけの話であって、「野球を全く見たことがない」という一部の人間からすれば、きっとわけわからない言葉ばかりのはずです。そういう人はカミングアウトするタイミングを逃しているだけで、実はいつも知ったかぶりをしているのかもしれませんよ。あなたは知らず知らずのうちに誰かに疎外感を与えていたのかもしれません・・・。

@@@@@@@@@@

「お~い、昨日のジャイアンツ戦見たか!?」

クラスで一番の元気少年タクヤは、朝の教室に入ってくるなり大げさに腕を振って誰にともなく話しかけた。

僕は反射的に目を伏せた。話しかけられたら一大事だ。

僕はクラスにおいて中心的人物となっているという自負がある。50メートル走はクラスで2位か3位。勉強は真ん中より少し上。女子にモテないこともない。クラス全体を巻き込んだ話の輪には常に中心として加わることを心がけ、弱者への配慮も忘れない。でも、本当の中心はタクヤか、地元の少年野球チームで小学校四年生にしてエースと謳われているユウに譲ることにしている。中心でありながら出すぎない。それは僕にとって唯一といっても良い哲学なのである。

そんな僕にとって、唯一中心となれない話題がある。野球だ。僕の父親は野球が嫌いだ。母親は全てのスポーツに興味がない。そんなわけで、僕の家では野球を見ることが一切許されなかった。父親の野球嫌いの理由はわからない。ただ僕にとっては、野球というスポーツは我が家に存在しないということのみが事実であり、それ以外のことはさほど重要ではないし、大した影響を及ぼすものではない。とにかく、僕の家では野球を見れないし、だから僕は野球を殆ど知らない。

ユウは見るからにテンションの高そうなタクヤに目をやり、「見た見た」と応じた。

「あの阿部のホームランすごかったよなー」

「見事な“流し打ち”だったな」

―“流し打ち”?何を流すんだ。バットでボールを打つ競技なのに、何を流すんだ・・・?まずいぞ。今こちらに話題を振られたら・・・さばききれない。

「“逆方向”の打球があんなに飛ぶんだもんなー。やっぱり阿部のパワーはすごいよ」

“逆方向”?野球は前へとボールを打つから・・・逆ということは後ろ?後ろに打ってもホームランになるのか?そんな!ファウルじゃないの!?今まで知らなかった!

「守備のほうでも二回もランナーを“刺した”な」

ユウは朝学習のお供のHB鉛筆を人差し指でくるっと回しながら笑っていた。“刺す”なんていう言葉をこんなにも屈託のない笑顔で口に出すなんて・・・。僕は野球チームのエースである彼の将来を案ずるとともに、ジャイアンツの阿部という選手にこらえがたい嫌悪感を抱いた。試合中に二度もランナーを刺し殺すなんて、野球とはそんな人間がやってもいいスポーツなんだろうか。

「アツトは昨日の野球見た?」

背後から急に僕の名前を呼ぶ声がして、瞬間背筋が凍った。そう、“アツト”とは僕の名前だ。冷や汗が頬をつたい、眼球が尋常ならざる様子で泳いでいるのが自分でも認識できた。

「ミミミミ、ミタ、ミ見たよ」

言った瞬間「しまった」と思った。何故見たことにしてしまったのだ。メリットが、ない。

「そっかー、野球は人気がなくなってるとか言うけど、意外とみんな見てるんだな」

そう言ったのは、先ほど背後から余計な声をかけてきたタカだった。こいつ・・・!話に加わってなかったくせに、僕をダシにして・・・!彼に悪意はないのだろうけど、僕はこいつの頭を“流し打ち”したい衝動に駆られた。“流し打ち”の意味はわからないけれども・・・。なんとなく、ニュアンスは理解できた気がする。

タクヤは先ほどよりも嬉しそうな表情を浮かべて

「アツトもわかるよな。あの阿部の“流し打ち”の素晴らしさが」

インナーのシャツが、冷や汗を吸い込みきれなくなった。僕は「人間って、汗をこんなに流すのだなぁ。“流し打ち”だけに」と思うと同時に、「やべーってまじやべーって。ないない。言えること、何もない。アイハヴノーアイディア!」と思った。もはや、正常な判断をできる状態にはなかった。

「ススすばらすぃかったネ」

僕は同意してしまい、自ら退路を塞いでしまった。

「何しろね。飛距離がハンパないよ」

ユウが僕を見ながらフフンと鼻を鳴らした。まるで我がことのように嬉しそうだ。相当のファンなのだろう。試合中に二度もランナーを刺し殺すやつの・・・。

だが、今それはさほど重要ではない。今重要なのは、「僕が野球を知っている」ということなのである。知っているという前提。これは100%不動だ。不動でなければならない。しからば、先ほどの専門用語らしき会話に、自分も足を踏み入れる必要がある。

「あの、後ろに打ったやつの、飛距離、やばい、ネ」

僕は意を決して、一歩踏み込んだ知見をつむぎ出した。言った瞬間、やはり少し後悔したが、逆にここを看破すれば「クラスの中心人物アツト君」の地位を保守できるということがわかっていたので、できるだけ平静を装った。

僕が人生の分水嶺に立っているとき、他の三人は無言だった。僕の言ったことがよくわからないという様子だった。タクヤとユウの二人は互いに顔を見合わせて、「た、確かに阿部のファウルはゴニョゴニョ」のようなはっきりしないことを言っていた。タカは「どういうことだよ」と、ただ疑問のみを口にした。

「クラスの中心人物アツト君」の像は案外簡単に崩れ去った。僕が「野球」というスポーツを知らなかったがために。それからも「野球」という言葉にいちいち動揺し、いちいち冷や汗を流す日々を送っている。

未だに僕が野球について知っていることは殆ど無い。調べる気もない。ただひとつ、あのとき以来、僕と彼らの進む道は“逆方向”になってしまったこと。これだけは確かだ。

@@@@@@@@@@

自分の予想を遙かに超えた悲しい話を書いてしまった。例に拠って、冒頭に注意書きしようかと思いましたが、ここんとこ言い訳しかしていなかった気がするのでやめておきます。「この日記を読んで時間を無駄にしてしまった」という類のクレームは一切受け付けませんのでご容赦ください。

| | コメント (6) | トラックバック (0)

« 2010年3月 | トップページ | 2010年6月 »